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熊本地裁厚生省と国会の責任を明確に認める

平成一〇年・第七六四号、同第一〇〇〇号、同第一二八二号、
平成一一年・第三八三号「らい予防法」違憲国家賠償請求事件

原告団・弁護団声明

熊本地方裁判所は本日、原告側の全面勝訴判決を言い渡した。わが国のハンセン病政策は、療養所とは名ばかりの収容所にすべての患者を終生隔離して死に絶えるのを待つという絶対隔離絶滅政策である。国による組織的な政策遂行は、患者と家族の社会的人格を否定したうえ、強制収容、強制労働、断種・中絶、懲罰・監禁など多くの人権蹂躙をともない、ときに患者の生命を奪うものでさえあった。1907(明治40)年にはじまり、1996(平成8)年3月に「らい予防法」が廃止されるまで、実に90年もの長きにおよんだ。法廃止から5年たった現在も、全国13の国立療養所に4000人を越える入所者が平均年齢74歳、平均入所期間40年を越えて社会復帰できず、故郷に帰れない2万3000余柱の遺骨が療養所の納骨堂に眠っている。日本国憲法下における最大・最長・最悪の人権侵害事案でありながら、司法救済からさえ隔離されてきた。1998年(平成10)年7月31日熊本地方裁判所に13人のもと患者らが提起した「人間回復裁判」は、またたくまに東京、岡山の地方裁判所にもおよび、現在、原告数779名もの闘いに発展し、なお運動の輪を広げている。

本判決は司法救済からさえ隔離されてきたもと患者らに対するはじめての司法判断であり、判断がなされたこと自体、もと患者らが「人間回復」をはかるうえで画期的な出来事である。また、わが国のハンセン病政策の犯罪性と人権蹂躙の実態を正しく把握したうえで、ハンセン病政策と「らい予防法」が明白に違憲であること、加害行為が法廃止まで継続していることから除斥期間が適用されないことを明言しており、原告側の全面勝訴判決であると高く評価できる。もと患者らの平均年齢は74歳を超えていることから、「真の権利救済」のためにはその人権回復が一刻の猶予も許されない緊急の課題である。本裁判は提起されてから3年足らずという異例のスピードで審理がおこなわれた。国会においても、本判決に先立つ本年4月5日、われわれ原告・弁護団を側面から支援し、この訴訟の最終解決を求めて活動するとともに、強制隔離政策の継続を許してきた国会自体の責任を検証することをも趣意とした与党を含む超党派の国会議員による懇談会が結成されている。これも異例のことである。被告国(厚生労働省、法務省)は、いたずらに控訴せず、本判決に服すべきである。解決の引き延ばしは、原告らから司法救済を受ける権利さえ奪う新たな国家犯罪にほかならない。

いまこそ国の責任を前提とし、「真相究明」「人権回復」「再発防止」を柱とする全面解決がはかられなければならない。われわれは、本判決に基づき、国の責任を前提とする全面解決を早期に実現するよう全力を傾注する所存である。全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)と全面的に共闘することはもちろん、これまで厳しい偏見を考慮して沈黙を守ってきた全国の入所者・退所者にともに闘うことを呼びかけたい。これまで本訴訟を支援していただいた国民の皆様にも本件の全面解決までこれまで以上のご理解とご支援をお願いする次第である。

2001年5月11日

ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会
ハンセン病違憲国賠訴訟全国弁護団連絡会